コラム

今月のコラム

2009年 7月号

歯科医院経営を考える(382)
~人材を育てる~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 以前にも取り上げた「百マス計算」の陰山英男先生(元尾道市立土堂小学校校長)が「娘が東大に合格した本当の理由」という本を出されている。先生の持論である「早寝早起き朝ごはん」と「陰山メソッド」といわれる読み書き計算の徹底反復で子供たちの学力を驚異的に伸ばすという考えを、自分の子供の東大合格によって実証された。自分の孫を見ていて思うのだが、小さい子供の脳というのは、鍛えれば鍛えるほど伸びるから神秘的である。百人一首を何分で全て取らせるかを実施されており、最初は1時間ほどかかっていても、最後はわずか7分で取るという。重要なことは脳の活力であり瞬発力(脳のダッシュカ)だという。

 

 陰山先生は現在教育再生会議有識者委員をされているが、その座長であるノーベル賞を受賞された野依良治先生が「塾を潰せ」と発言されたという。それは学校の帰り道、寄り道しながら川に石を投げたり、きれいな夕日を見たりしながら帰る事が実は科学の土台になっているという。そうした環境の中で子供達はいろんな興味や関心を育むのであろう。ところが最近の子供達は朝日や夕日を見ることがないまま育ってくるという。朝日や夕日を見ないことはないのだろうが、塾通いでそのようなゆとりがなくなっているのであろう。子供の教育を考えるとき、きちんとした生活習慣、読み書き計算の徹底反復、それと自然や社会への興味関心を育てることが重要ではないかと思う。

 

 

 陰山先生の娘さんも受験体験記を書いている。その中で「東大に入ったからといって必ずしも人生が変わるわけではないけれど、東大を目指すことで人生が変わった」と書いているのが印象的である。東大受験という過酷な環境に身を置くことで、親や友人との関係、自分の感情や欲望を律すること、ものの見方や考え方等々多くのものを学び自分が成長出来たと実感できたからであろう。

 

 これは東大受験の話だが、歯科医院のスタッフ教育においても原則は変わらないと思う。入ってくる若いスタッフ、特に受付や歯科助手募集の場合は興味や関心が高い。特に歯の治療や歯周病、根管治療等々、興味津々だから、ある程度の理屈(理由)も説いて教えることが大切である。同時に基本的なことは徹底して覚えさせることだ。小さい子供ではないから闇雲に覚えることができないから、暗記することとある程度の理由、理論を並行させることが必要である。最初は少し緩やかに、興味や関心が高まり、知識や技術がある程度身に付いてきたら、徐々に厳しくしていく。常に少し負荷を大きめにかけるのがコツである。覚える内容は6箇月くらいの間に基本的な知識を身につけさせる。衛生士の場合は、再復習を兼ねて基礎を見直すとともに、実習を並行させる。これとは別に人間関係に関する知識、技術は最初から徹底的に教えることである。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2009年 7月号より転載〕