コラム

今月のコラム

2011年 8月号

歯科医院経営を考える(407)
~なでしこジャパンの勝因~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 「なでしこジャパン」が1勝もできなかったアメリカに勝ち、とうとう世界一になった。その優勝戦を見ていて鳥肌が立つ場面が何回かあった。何度リードされても必ず追いつく「不屈」のプレーにスタジアムの観衆も称賛を惜しまなかったという。現地ドイツでも奇跡と呼ばれていたというが、アメリカの選手に比べて平均10センチ低い身長ながらパスをつないで最期に競り勝った。今回の優勝戦を見ていて「なでしこジャパン」の優勝した原因を考えてみた。日本では男子サッカーに比べて女子サッカーはまだまだ金銭面も含めてプレー環境が厳しい。選手達を取り巻く環境は恵まれているとは言い難い。所属する企業チームの休部が相次ぎ、「仕事」と「サッカー」の両立に苦戦している。かつては国際大会の代表に選ばれても遠征費用の半分は自己負担であったという。「マイナー競技の悲哀」を味わい続けた先輩たちの犠牲の上に今回大輪の花が開いた(毎日新聞)という。大会得点王とMVPのダブル受賞した澤選手でさえ、今季、前所属クラブから「プロ契約はできない」と通告されて移籍を余儀なくされたのだから。

 

失うものは何もない。ただ全力を出し切るのみという姿勢で臨んだはずだ。こうした厳しい環境下で不屈の精神が育まれたと言ってもよいと思う。試合の前後に大震災への復興支援に謝意を表す「世界中の友へ、みなさんの支援に感謝します」と英文で書いた横断幕を持ってピッチを周回したというが、選手達の感謝に対する素直な気持ちがそうさせたのだろう。これに対してアメリカチームは勝たなければならないというプレッシャーに負けたのではないか。もう一つの勝因は、目立たないが佐々木則夫監督の存在である。社会人リーグで選手として活動し、監督を経験して07年から女子サッカー代表の監督に就任している。試合前佐々木監督は女子代表チームが初めて編成された80年代からの映像と東日本大震災の映像を見せている。それを見た選手の一人は「女子サッカーを築いてきた人達がいて、今の自分達がいる」という感想を述べている。そうして横断幕を持ってピッチを回るという行動もそうした映像を見たからであろう。選手達のだれもがチームワークとか団結力を勝因に挙げているが、選手達の体調や疲労度合い等澤選手と連携してよく観察していたという。以前一緒にプレーした後輩は「殴るけるが当たり前の時代に、安心して攻撃に専念しろ」と温かく声を掛けてくれたといい、個々の選手の特性をしっかり把握してその能力を引っ張りだすのに優れていたという。

 

 女性の多い職場の歯科医院も女子サッカーチームに似ている。院長が余り前面に出るよりもスタッフのやる気を引き出すマネジメントがより大きい効果を発揮する。仲良くすることは大事だが、スタッフ自身の目標と行動を常に意識させ、仲間との連携を再重要課題と意識させることが重要なのである。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2011年 7月号より転載〕