コラム

今月のコラム

2011年 4月号

歯科医院経営を考える(403)
~組織上の決定プロセスの問題点~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 マグニチュード9.0の破壊力の大きさをまざまざと見せつけられた東北関東大震災である。3月20日現在で死者・行方不明で21,000人だという。長いお付き合いをしている知り合いの歯科の先生お二人のうち、福島県本宮市の先生は無事だったが、岩手県宮古市の先生とは連絡がとれない。ただただ無事を祈るしかない。

 

 それにしてもわれわれの日常生活が豊かになればなるほど、いざというときの備えの大切さを学ばなければならないと痛感する。電気が止まれぼ何もかもが止まってしまう生活の中にいる。携帯も電源がなければ使いものにならない。ガソリンがなければ車が使えず援助物資の搬送もままならない。特に水は生命線である。ミネラルウォーターの普及が被災者の生命線になった部分も大きいと思うが、東京や大阪のような大都会ではもっと悲惨な状況になることが予想される。水、電気、食料の安定確保が今後の災害対策の要になると思う。同時に個人の立場でも十分な災害対策が不可欠であり、国は国民の防災教育を徹底すべきだ。その前に国は自然災害の予測と対応策を立てるべきだ。想定外の地震であったとしても100年ほど前に発生した岩手県沿岸の明治三陸地震津波は高さ38メートルを記録したといわれているそうだから、岸壁等の備えはどうだったのかと思う。

 

 今回の地震は被害規模の大きさだけでなく、原子力発電所の事故が重なって被害が拡大している。想定外の地震であったとしても、福島第一原子力発電所の事故は、大津波を想定するべきだったのではないか。地震直後では原子力発電所は正常に作動していたというが、後から発生した大津波によって電気系統が海水に浸かってしまったこと、オイルタンクが流出して冷却水を循環させるディーゼルエンジンの燃料が確保できなくなったことが原因とされている。確認したわけではないが、福島第一原子力発電所の岸壁の高さはわずか5メートルだそうだ。国民に対して「安全な原子力発電所」だというのであれば、想定外では済まない問題ではないか。メルトダウンすればとんでもない事故につながることが分かっていて、どうして周辺の機器に対してこの程度の対策しかとっていなかったのか不思議だ。原子物理学の知識の全くない素人が考えても理屈に合わない対策ではないかと思う。

 

 3月6日(日)NHKテレビで放映された「NHKスペシャル・日本人はなぜ戦争へと向かったか」「開戦決定驚きの真相」を見て思うのは、当時の日本国の意思を決定した幹部の誰一人戦争に勝てるとは思っていなかった。であれば何故開戦を決定したのか。大災害、大事件から見えてくる我が国の組織における意思決定上の問題が浮かび上がってきているように思う。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2011年 4月号より転載〕