コラム

今月のコラム

2012年 2月号

歯科医院経営を考える(413)
~集団的個別指導と1レセ単価~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 平成24年度歯科診療報酬の改定率が1.7%のプラス改定(医療費ベースでは500億円)となった。(医科は1.55%のプラス改定、医療費全体では0.004%のプラス改定で小宮山厚労相はこれを「首の皮1枚の改定」と表現している)平成22年度の改定率が2.09%であったから、それよりも低い率だが、プラスになっただけでも良しとしなければならないのかもしれない。しかしこれは予算上の話で1.7%の改定率だといっても、実際に実額で500億円増加するかどうかが問題である。施設基準が設けられ、高いハードルが作られているからなかなか算定が進まない実態がある。

 

 例えば診療行為別調査によれば、歯科治療総合医療管理料は、全国で10,789施設が届け出ているが、算定回数はわずか2,171回である。つまりほとんど使われていないということだ。このような改定がいくら実施されても改定率がプラスだと単純に喜ぶわけにはいかない。また高点数診療所への指導も徐々に厳しさを増しているように思う。集団的個別指導は1レセプト当たりの平均点数が、県の平均より20%超えている場合(病院は10%超)に適用され、1件当たりの平均点数が高い順に選定し、一定の場所に集められて面接懇談方式により簡便な指導を受けるというものである。さらに都道府県単位で個別指導が実施される。「集団的個別指導を受けた保険医療機関等のうち、翌年度の実績が上位半数以上(全医療機関の4%程度)に入った場合に個別指導の対象となるとされている。ただレセプト件数が少ない医療機関は、高齢の院長が多いということもあり対象外とされているようである。支払基金は今年の3月(2月診療分)から電子レセプトを対象に「突合点検」、「縦覧点検」を実施するという。前者は歯科レセプトの傷病名と調剤レセプトの医薬品の適応症・投与日数などの点検をするといい、後者は1人の患者に対する当月レセプトと過去の請求レセプトが照会され、算定ルールや算定回数、過去の審査履歴を踏まえた医療機関単位での点検が実施される。

 

今は電子レセプトを普及させることが主目標であるから、余り厳しいチェックはないと思うが、今後コンピューターを使ったきめ細かい審査体制が確立すると思う。点数の高低だけでなく各歯科医院での診療や治療方針、治療技術の巧拙等々いろんな分析が可能になる。さらにその先には、国民総背番号制の導入により患者一人一人の使った医療費の算定や支払った保険料等々把握されるようになると思う。以上から推量できることは、国の医療財政の緊縮に伴い医療機関への締め付けが徐々に厳しくなるということであり、ニッチもサッチもいかなくなり音を上げるころに保険制度の見直しが待っているのではないか。某税理士事務所の統計によれば、歯科医院の1レセプト単価が平成14年から、平成23年の9年間で22.5%も減少している事実が裏付けていると思う。近未来を想定すれば、今通院してくれている患者をしっかり囲い込む体制を早急に作っておくべきである。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2012年 2月号より転載〕