コラム

今月のコラム

2014年 11月号

歯科医院経営を考える(446)
~人手不足の時代をどう乗り切るか~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 神戸のF先生の診療所には衛生士4名(内1名はパート)、歯科助手が2名(1名はパート)、受付が1名の7名のスタッフがいる。先生の診療方針は歯周・予防に重点を置き、補綴治療や矯正治療も手掛ける中堅の歯科医院である。スタッフは56歳のパートの助手が最高齢だが、衛生士は43歳、32歳、31歳、21歳と若く、歯科助手が33歳、受付は44歳と若いスタッフが多い。ところが32歳と31歳の衛生士が育児休暇に入っており、さらに追い打ちをかけるように受付が「膠原病」で入院するという事態になり大騒動となっている。若いスタッフが多いことは活気もあり、仕事の能率も高くてよいのだが、育児休業というハードルも大きい。院長がミーティングで非常事態宣言をして、残りのスタッフの結束を図り患者数を制限してなんとか乗り切っている。この先生の就業規則によれば、介護および出産・育児休業の場合は、給与は無給となっているから費用という点では問題はないが、(従業員の方でもハローワークによる「育児休業給付金」制度を利用すると、月額給与の67%が支給され、何日か働いた場合でも一部給付金が支払われる場合がある)問題は人手不足が続くことである。

 

このような非常事態の時は余りみんなに無理をさせないで、患者に説明をして患者数を減らし無理なくやれる体制に切り替えるべきである。事情を説明すれば患者も分かってくれるし、分かってくれない患者がいても、そのような患者は決して医院にとってプラスにはならないから心配しないでよいのである。ただ患者を制限しても勤務する各スタッフに負担はかかるから、長期にわたるようであれば、パートの採用も視野に入れる必要がある。特に1日の患者数が40~50人となると受付1人でほ負担が大きくなるから、パートを考えるか2人の体制にすべきである。衛生士の育児休業の場合は、メンテナンスの患者を絞って少なくし通院期間を延長するとともに、出産後のパート勤務を促す政策を考える。これには個々の衛生士の事情を十分考慮しなければならないが、個々の事情に合わせて働き易い環境を整え、できるだけ長期に勤務してもらう体制作りが不可欠である。

 

それは今後スタッフの採用が極めて難しい状況になることを考えるからである。ブラック企業と言われた企業は、昨今の人手不足で倒産の憂き目にあっていると報告されている。若い人材が相対的に減少する一方高齢者が増加していくから、介護や福祉関連従事者の絶対数が不足してくると予想されている。電気設備工事会社や危険物取扱い業者では人手不足が激しく70歳、75歳の従業員も働いているというから、今後歯科界においても高齢の従業貞といえども確保しておく必要が出てくるのではないか。歯科医院のように規模が小さいからこそ、一律に考えないで、各スタッフの事情を考慮して柔軟に対応することが重要だと思う。

(つづく)

 

〔タマヰニュース2014年11月号より転載〕