コラム

今月のコラム

2015年10月号

歯科医院経営を考える(457)
~マイナンバー制度(2)~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 以前にも取り上げたマイナンバー制度がいよいよ運用される事態となった。10月5日の基準日を基に12桁の番号が割り振られる。家族単位で番号が送られてくるが、一人一人の番号は住民票に従い完全に独立した番号で、1人1番号となっている。運用は平成28年1月からだが、実際に使用される(運用される)のは社会保障と税務関係及び災害対策の3分野である。9月3日にはマイナンバー法改正案が衆議院本会議で可決・成立したから平成30年からは銀行預金口座にもマイナンバーがひもづけされる。ただ預金者には自分のマイナンバーを銀行に告知する義務はないとされているが、将来は義務化される可能性は高い。

 

また医療法人等の法人に対しても13桁のナンバーが付けられるが、今後のマイナンバー制度の運用スケジュールでは、平成28年1月からは「個人番号カード」が(本人の申請によって)発行されメタボ健診や国家公務員の身分証明書として一元化される。平成29年からは国の行政機関同士で情報連携を開始し、7月からは地方自治体とも情報連携を開始することになっている。つまり必要な個人情報が国や地方自治体でやり取りされるということである。それに従って「マイナポータル」といわれるシステムが稼動するとされている。これは自己の個人情報を自らが閲覧できるようにすることとか、国や自治体が自分の個人情報をどのようにやり取りしたかの一覧記録や予防接種や介護、年金のお知らせを「個人番号カード」を使ってみることができるというものだ。それほど意味のあるものとは思えないが、自分の個人情報がどう利用されているかが確認できるという程度のものである。その他に個人番号カードを健康保険証に利用するとか、キャッシュカード、クレジットカードとして利用する等が検討されている。さらには「各種免許の公的資格確認機能」の搭載も検討中となっており、運転免許証、医師・歯科医師免許、教員免許等の公的な資格証明書も個人カードと一体化する可能性が高い。

 

平成30年からの運用面では上記の預貯金カードへのマイナンバーの適用が大きいが、それ以上に大きな問題は医療分野でマイナンバー制度の段階的な運用開始である。個人情報の最たるものが出自に絡む戸籍情報や病歴に絡む医療情報である。それらが組み込まれてくることによって医療機関では個人情報の管理が極めて重要になる。カルテにマイナンバーを記載するようになれば、カルテの管理を厳重にしないと情報の漏洩にさらされる恐れがある。レセプト用コンピューターを請求用回線につなぎっばなし等というようなことをすれば、何時、どのように侵入され個人情報が漏洩するかわからない。レセコンには厳重に鍵をかけ、暗証番号を持った請求担当者を決め他の人間には触らせないといった厳重な管理が必要になるのではないか。漏洩した場合の患者からの賠償責任が経営を危うくする事態も想定される時代になったということである。

 

(つづく))

 

〔タマヰニュース2015年10月号より転載〕