コラム

今月のコラム

2016年01月号

歯科医院経営を考える(460)
~医院経営の本気度~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 昨年11月に長野県伊那市にある伊那食品という会社を見学した。あらゆる寒天に関した食品や薬品を製造しており、国内シェアーは80%、世界でも15%のシェアーを持つという。寒天という限られた商品ではあるが世界のトップメーカーである。寒天は海で取れる「テングサ」が原料で、それを溶かしたり、固めたりして組み合わせを変えて、新しい価値や商品を作りだしている。実に単純な商品であり、食品以外に化粧品、医薬品、医学の研究では細胞培養のために利用されているという。この会社が掲げている経営方針は三つある。一つは「無理な成長は追わない」、二つ目は「敵を作らない」、最後は「成長の種まきを怠らない」この三つだという。48年間増収増益を続けているというから、寒天というありきたりの原料を徹底して研究し商品開発に徹してきたということである。「社員の幸せを実現するための経営」を謳い、創業以来社員をリストラせず、人件費をコストとは見ないという。経営は「社員の幸せを通して社会に貢献する」というのが経営理念だというが、なかなか理念通り実践することは容易ではない。しかし文字通り徹底して実践しているから凄い。本気度が違うと思う。だから従業員も何の疑いもなく上司の言うことを聞くし、行動するという習慣がついているのである。この会社を見学して思うのは、経営の本気度と言うことである。経営理念や社是というものに対しての経営者の本気度である。経営者の考えていることと行動が一致しないということは多いが、それが一切ないということである。だから「成長の種まきを怠らない」という方針も徹底されている。従業員それぞれが必死になって考え行動する。それが凄いと思う。経営者の腹が座っているというのか、本気になって考えていることが肌で感じられるということである。経営とは本来そうあるべきなのかもしれないと思う。

 

ある先生から相談の電話がかかってきた。専従者である奥さんが、2人いる衛生士にそれぞれの給与明細表を間違って渡してしまい、一人の衛生士が退職すると怒っているのだという。なぜ怒っているのか?聞いてみると、二人ともに子育て中であり、従って二人ともにパートとしての扱いであったはずなのに、一方の衛生士は常勤扱いであり、育児手当まで支給していたというのである。そこでパート扱いを受けた衛生士が不平等であると院長に食って掛かってきたという次第である。問題は院長もそういう扱いをしているという事実を知らなかったことである。つまり給与計算をはじめ、経理全般の診療以外は全て専従者任せになっていたのである。基本的な問題は、院内における専従者の個人的な人間関係が診療所の人事まで影響していたという事実であり、院長は知らなかったというのは理屈にならない。結果的にはそれを許していたという事になる。院長は経営の基本としての「経営理念」を確立し、専従者を含めてスタッフ全員に徹底させる義務がある。その上で、チームークを育てスタッフの人間的成長を促すというマネジメントが求められる。そのためには誰もが納得できる公平なルールが不可欠である。院長の本気度が試される訳だ。

 

(つづく))

 

〔タマヰニュース2016年01月号より転載〕