コラム

今月のコラム

2017年 6月号

歯科医院経営を考える(477)
~待遇改善は早めに~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 従業員23名を雇用している歯科医院の院長に最近の求人事情について話を聞いた。最近の若者の社会的なルール無視は甚だしいという。応募してきて見学の日を決めていても何の連絡もなく来院しないとか、面接のマナーもよいし、採用テストも問題ないので採用を決定したら、何の連絡もなくキャンセルしてしまう等社会常識というものが全くないに等しい者もいるという。全ての若者がそうだとは思わないが、人手不足を背景にして採用される側の身勝手な行動が目に余る例が増えている。一方では基本給や手当がじりじり上がり、パートの時給も最高の東京都が932円、神奈川930円から最低の沖縄及び宮崎が712円となっており、国は時給単価を1,000円にしようという計画もあると聞く。東京ディズニーランド(TDR)の従業員は23,000人ほどいると言われているが、そのうち約8割に当たる18,000人余りがアルバイトだそうである。常に笑顔を絶やさず、ごみが落ちていると素早く塵取りにかきいれる等、その行動は入園者の高い評価になっている。また、にこやかな笑顔を振りまきながらショーの開演前の長蛇の列を誘導しているのもすべてアルバイトだ。TDRはそのアルバイトを含む2万人の非正規労働者を労働組合に加入させ、時給の上限を1,100円から1,350円に引き上げたという。今や年間3,100万人を超える入園者があり、こうした入園者に直接接するアルバイトの労働者に目配りしないとTDRの高い評価を維持できなくなってきているということである。日本の「おもてなし」が海外からの観光客に高い評価になっているというが、人手不足を背景に給与面でコスト高に反映されるようになってきている。電通の新卒社員が過労自殺を図って社会的な問題になったが、それ以後労働時間に対する社会の目が厳しくなってきており、雇う方からすると環境は厳しくなる一方である。歯科医院のスタッフも職員、パート、アルバイト等、いろいろ給与面での差は出ているが、職員と同じ時間働いているのにパート扱いのまま放置している歯科医院も多い。不満がなければよいが、いままで文句を言ってこないから問題ないと考えている院長もいる。もし不満を抱えているなら先手を打って待遇改善を図るぐらいしないと院内がぎくしゃくしだすと取り返しがつかなくなる。特にベテランのパートが多くいる歯科医院は、陰に陽に若い従業員に悪い情報を流す等影響が大きいので、ベテランのパートの不満を聞き出して積極的に対処するべきである。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2017年 6月号より転載〕