コラム

今月のコラム

2017年 9月号

歯科医院経営を考える(480)
~衛生士の給与体系と昇給~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 地方都市の知り合いの先生から相談の電話がかかってきた。衛生士が突然8月で退職したいという。理由を聞くと「給与が低いから」といい、給与を上げてくれるなら考えてもよいという。給与額を聞くと勤務して5年目に入る衛生士で、支給総額が皆勤手当1万円、衛生士手当1万円、通勤手当7千円を含めて205千円で、歯科医師国保や税金を引くと手取りは19万円を切るという。最近は地方でも衛生士の給与は上昇してきているが、これでは低いと言わざるを得ない。最近は都市部の場合新人の衛生士でも所得税等の控除額を差し引いて手取りが20万円近くになっているケースが多い。少なくとも税等の控除後の金額が21~22万円前後になる程度の給与が必要ではないか?聞けば勤務態度もよく、口腔衛生指導も積極的にこなしているという。提案したのは手取りが21万円になるように昇給するということと、昇給決定の前に一度当該衛生士と面談し、希望通り昇給するが、あなたの将来に期待しており、具体的な研修目標を示して、それを習得して立派な衛生士として成長してくれるならあなたの希望を全面的に受け入れるが、あなたの考えはどうですか?と聞いてもらいたいと提案した。特に上に古参の衛生士がいるとどうしても新人の衛生士の給与額が低くなる傾向がある。この歯科医院の場合も50歳後半の古参の衛生士が居てその給与と差額を考慮して昇給を抑え気味にしていた結果が上記の給与額になっている。これは衛生士に限らず看護師の給与も同じような傾向になっているが、30歳後半から40歳近くになると給与ベースが頭打ちになる傾向がある。それは医療界の収益構造の特徴だと思う。ただ管理職の場合は別で、管理職手当がついて給与総額も大きくなるが、医科の看護師の場合は衛生士と同様の傾向がみられる。栄養士の場合もそのようなケースが多い。伸び盛りの20歳代後半の衛生士の場合は、思い切って昇給しベテランの衛生士の給与との差が縮んでも容認するべきである。30歳前後からは、実力主義の給与体系にして、年齢差をなくして先輩の衛生士よりも給与ベースが高いといった給与体系を容認するべきである。ただし古参の衛生士の場合で、後輩の衛生士の面倒をよく見ている場合は、管理職手当の支給によりカバーするべきだと思う。勿論給与ベースだけの問題ではなく、能力、努力等本人の評価を体系づけるべきである。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2017年 9月号より転載〕