コラム

今月のコラム

2018年12月号

歯科医院経営を考える(495)
~医院の労務と意思疎通~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 従業員が10人未満の歯科医院でも、院長は全従業員の業務知識、能力や思想考え、行動特性を把握しておくことが必要である。そうして常にだれとだれは仲が良く、誰と誰は反目しあっている等の従業員間のグループ把握が必要である。当然各人の雇用条件や待遇、処遇も把握しておくべきである。ところが意外に従業員のことは全く奥さんに任せているという先生が多い。T先生から夜遅く電話がかかってきた。従業員の一人が、医院のマイナンバーの取り扱いが信用できないから外部の信用できる税理士か社会保険労務士に委託してくれという苦情を言ってきたというのである。T歯科医院では奥さんが経理を担当しており、マイナンバーを管理していることになっているが、マイナンバー記録の資料を人前に出したままにしたり、従業員のマイナンバーをコピーを取ってそのまま人前に出し放しにしているというので信頼できないという。そもそも院長自身がマイナンバーの取り扱いの重要性を認識しておらず、何故そのような無理な要求を出してくるのか解らないという。社労士に委託すれば従業員1人に付月額1,700円の委託料を支払わねばならず、そのような経費は使えないのだという。以前にもこの経理担当の奥さんは、従業員Aと従業員Bの給与明細書を渡し間違って大騒動になったことがあるが、こうした問題は経理担当の奥さんに問題はあるのだが、医院経営の全体的な責任は全て院長にある。仕事上の従業員研修や勉強会は毎週のように実施しているが、従業員の昇給額の決定や手当等は奥さんに任し放しにしており、院長の預かり知らぬところで決められているというところにある。今後従業員の採用が難しくなってくると予想されるが、今後の歯科医院経営では従業員管理が極めて重要になってくると思う。今年5月1日現在の総務省の調査によれば20~29歳の人口は12,526千人だが、10年後の同人口は11,380千人で1,146千人減少する。今後規模の小さい歯科医院では新卒の採用は不可能になるだろう。規模の大きい歯科医院では外国人労働者の受け入れも視野に入れる必要が出てくると思う。院長の意思を明確にし、院内の意思疎通を図り業務に専念させる院長のマネジメントが極めて重要になってくると思う。(マイナンバーの取り扱いは専任を決め、鍵をかけて厳重に管理すべきである)

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2018年12月号より転載〕