コラム

今月のコラム

2019年04月号

歯科医院経営を考える(499)
~有給休暇の取得義務化~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 OEDC(経済開発協力機構)が公表している主な国の1週間の平均労働時間数を比べると次のようになる。中国46時間、韓国43時間、日本39時間、イタリア37時間、アメリカ37時間、フランスおよびイギリスが36時間、ドイツ35時間である。我が国もかなり短くなったがそれでも先進国では最高に長い。そうした事情からか、今年の4月1日から働き方改革関連法案が施行される。大きくは3項目の改革が実施されるが、歯科医院にとっての問題は、「年次有給休暇の取得義務化」である。使用者は10日以上の年次有給休暇が授与される全ての従業員に対して毎年5日、時季を指定して与えなければならないとしている。これは我が国従業員の有給取得日数が低いことが原因で作成されたと言われるもので、すでに休みと決まっている正月休み等の休みを縮小して与えるといったことを禁止している。具体的な基準では、週に30時間以上働いているパート、もしくは週30時間未満であっても週に5日以上勤務している従業員の場合、勤続7か月目から有給10日の付与が義務付けられており、この場合5日の有給休暇の時季を指定して、(〇月〇日と具体的な日を指定)与えることとなっている。つまり強制的に5日の有給休暇を取らせるという政策である。パートの有給休暇の場合は、1日の分の給与が支給されるから、与えられた有給は確実に請求してくるが、常勤の従業員の場合は取りにくいのが現状だと思う。しかし5日は「時季を指定して」与えなければならない。また正規の従業員とパート等の従業員との不合理な待遇差を禁止するという項目も設けられている。こうした法令は人手不足の現状からは厳しい内容だが乗り越えざるを得ない。また働き方改革を実践していくには医療サービスの質を落とさずに医院の生産性をどう高めるか真剣に考える必要がある。私共の試算した100件余の歯科医院の労働生産性として、スタッフ1人(ドクター、技工士を除く院内のスタッフで、パートは0.5人と計算)あたりの月額平均収入を算出しているが、その金額が月額1,234千円となる。これを少なくとも10%、月額1,350千円程度にひきあげる必要があると思う。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2019年04月号より転載〕