コラム

今月のコラム

2019年05月号

歯科医院経営を考える(500)
~歯科医院の安定規模~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 某歯科医院の親子で3年間一緒に診療を続けてきたが上手くいかず、息子が独立して診療所を立ち上げることになった。大都市の中心地で周囲にはマンションもあり、コンビニが撤退した後の建物を借りて開業するという。チェアー3台を始め、CT、セレック、マイクロスコープ等々機器の設備投資を含めて約8千万円、運転資金を入れると約1億円近い資金が必要だというが、勝手に飛び出しておいて親に保証人になってくれと要請してきたという。院長が筆者に意見を聞いてきたから「院長が保証人になるべきではない。どうしても保証人が必要なら、院長の奥さんが保証人になりなさい」と回答した。独立して開業するということはそのような甘いものではないのである。もし行き詰って倒産すれば親まで倒産する危険性が出てくる。個人の歯科医院の倒産件数は余り表面化しないから分かりにくいが、大都市に行くと突然看板が無くなっているケースはよく見かける。最近は特に多いように思う。決して倒産が少なくなっているわけではない。設備投資が大きくなっている分、倒産も多く出ている。コンビニの建物であれば、来院患者は多いと思うが、地域の特性によっては老人が多くなる可能性や生保の患者が多く来院する可能性もある。その地域の特性をいろんな情報から入手しておく必要がある。例えば年齢構成等から、近くの商店街での商品の種類や価格動向、衣服等から近くの住民の所得階層、生活習慣等々集めるべき情報は多種多様である。その上で自分の診療方針を立て、それを確実に実践することが重要である。しかもスタッフの採用は容易に達成できても、院長の対応次第では簡単に退職するのも都心部での採用事情である。スタッフ教育も徹底して実施するべきである。今後の歯科医院経営の環境を考えると競争環境は益々厳しくなると思う。厚労省の医療施設調査によれば、平成24年の歯科医院数は、医療法人が11,481院、個人が56,378院である。それから5年後の平成29年の最新の統計によれば、医療法人が13,371院、個人が54,133院で、医療法人が2,390院増加し、個人は2,245院の減少となっている。勿論高齢化による廃業もあるから単純に比較はできないが、法人が増加していることは確実である。それは経営規模が大きく膨らんできている証拠であり、ドクターが2人以上いないと経営が安定維持ができないという証明である。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2019年05月号より転載〕