コラム

今月のコラム

2019年07月号

歯科医院経営を考える(502)
~老後の生活資金~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 金融庁の報告書で、定年後に夫婦で夫が65歳、妻が60歳から30年間生きるには約2,000万円の生活資金が不足するとの試算を公表して問題になっている。しかしこれは一般サラリーマンの厚生年金を前提とした金額であり、歯科医院の院長の場合はとてもこれでは足りない。そもそも国民年金では月額8万円程度にしかならない。仕事を辞めて年金等で生活しようとする場合の夫婦の生活費は最低で月約25万円とされる。年間25万円×12ヶ月=300万円である。仮に65歳で廃業もしくは子供に事業承継した場合は、平均95歳まで生存したとして夫婦で年間300万円×30年=9,000万円である。それも生活の最低額であり半端な金額ではない。歯科医院の場合これをカバーしてくれるのが「小規模企業共済制度」の事業主退職金である。従業員5人以下の小規模の場合なら加入できるが、入会するときに5人以下であれば問題はないし、加入後従業員数が増えても問題はない。また以前は専従者の加入は認められていなかったが、現在は認められている。(ただ医療法人の場合は加入できないことになっている)開業当初では月額7万円の掛け金は厳しいから3万円、5万円から始めて行けばよい。それに国も積極的に推進するために最高月額7万円、年間84万円の掛金を所得控除できるようにしているから節税効果が大きいことである。例えば課税所得が800万円で84万円の掛金の場合、節税額は277,000円、課税所得が1,000万円の場合なら361,000円の節税額になる。つまり800万円の所得で掛金(84万円)の32.9%が、1,000万円の所得では43%が節税になるという訳である。歯科医院を廃業すると退職金として支払われるが、最高額の月額7万円を30年間掛けていたとすれば、約3,043万円が下りてくる。専従者も同額掛けておれば6,086万円となる。この退職金に対する所得税は、仮に30年掛けていたとすれば、800万円+{70万円×(30-20)}=1,500万円が控除され、更にその半分に課税されるから所得税は1,088千円である。3,043-108=2,935万円残り専従者と併せれば5,870万円が残る。ただ子供に事業承継した場合は、退職金の5%程度が減額される。歯科医師には定年がないのだから、健康で身体の続く限り長く診療することが何よりも一番だと思う。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2019年07月号より転載〕