コラム

今月のコラム

2022年06月号

歯科医院経営を考える(534)
~閉院計画~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 今年73歳になる先生から電話がはいった。もうそろそろ閉院を考えているという。息子は別のところで開業しており、話し合ったが後を継ぐ意思はないという。事業承継に関しての私共の調査(歯科医院の経営指標)によれば、引退後の予定について、「閉院」が19.8%、「親族承継」が27.5%、「開業医への売却」が6.6%、「第三者への売却」が17.6%、「その他」(複数の選択肢を検討)が28.6%となっている。閉院の割合が約5軒に1軒の割合である。閉院の場合に問題となってくるのが患者の診療引継の問題と従業員の問題である。従業員は衛生士3人(内1人はパート)に歯科助手が1人、受付の職員が1人、パート職員が2人という陣容である。常勤の衛生士の2人は45歳と30歳、歯科助手は32歳、受付は35歳だという。職員にとっても閉院すると言われれば寝耳に水で身の振り方を考えねばならない。そういう意味ではできるだけ早く閉院のスケジュールを公表する必要がある。例えば75歳で閉院するなら少なくとも1年くらい前には「閉院」の宣告をしておく必要がある。ただ閉院前に退職する職員が出てくるから、閉院まで勤めてくれた職員には退職金にいくらかプラスすると宣言しておいた方がよい。その上で通院してきている患者にたいしては、その患者が通院するかどうかは別として知り合いの先生に紹介しておく等の対策は取っておくべきである。スタッフにとっては失業することになるから、生活上の重大事である。それだけに閉院を公表する前のできるだけ早い時期から従業員の退職金支払いにプラスアルファできる資金を考えておくべきである。さらに衛生士等の場合は比較的再就職は容易かもしれないが、歯科助手等はベテランであればあるほど先生の診療方針によってかなり異なるから、戸惑うことも多いと思う。地理的制約はあるが、できれば旧知の先生に紹介して再就職できるよう配慮したい。パート以外の受付やアシスタントについても自医院での働きぶり等を記録した紹介状等を書いて渡しておきたい。そうした対策を立てたうえで、後は自分の残りの人生をどう過ごすかの計画を立てて置くことと、閉院後の生活資金の確保である。閉院後の人生を充実させるために自分の趣味を深めることや余生をゆっくり過ごす資金計画を立てておくべきである。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2022年06月号より転載〕