コラム

今月のコラム

2022年07月号

歯科医院経営を考える(535)
~医学部の地域枠制度~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 医学部には「地域枠制度」という制度がある。2008年度の入試から導入された制度だが、医師不足、診療科の偏在が見られる地域での医学部入学者の選別方法で、卒業後は特定の地域で診療を行うことを条件に、通常の入学者とは別枠で実施される。2018年の医療法・医師法改正で都道府県の権限が強化され、医学部定員に地元出身者の枠が設けられるようになったが、2021年度の入試では医学部定員9,357人中、地域枠は1,724人を占めたと言われている。都市部に人口が集中し、少子高齢化による人口減少が進み、地方の医療体制の確保と維持は喫緊の課題である。平成28年4月20日に発表された医療従事者の需要に関する検討会の第5回「医師需給分科会」の調査によれば、制度がある大学が全国77校(現在は81校)中67校と87%の大学で実施されている。その中で奨学金を支給する地域枠を設けている大学は63校(複数回答)、奨学金を支給しない地域枠を設けている大学は19校である。編入学地域枠が11校となっている。雑誌「選択」は山梨県の事例を挙げているが、山梨大学などの医学部に在籍する学生を対象に奨学金を貸与している。最も対象者の多い「第二種医師就学資金」だと月額13万円で、卒業して2年以内に医師国家試験に合格し「山梨県地域枠等医師キャリア形成プログラム」に従って務めると返済免除となるという。6年間奨学金を受けると免除額は936万円になるが、問題は義務化されている勤務期間の長さにある。奨学金の貸与期間の2.5倍を管理期間とし、貸与期間の1.5倍に相当する期間を山梨県が指定する「特定公立病院等」で勤務することとしている。しかも最低4年間は県が「医師確保を特に図るべき区域等」に認定した僻地に派遣されるという。なお現在は上記の地域枠にはさらに診療科指定枠があり、上記地域枠の1,724人中245人が、産婦人科、救急科、小児科、総合内科、外科が診療科指定枠になっている。歯科でもそうだが、地方での閉院が増えて無医村が増えつつある今日、国は地域枠で学ぶ医学生に対して、大学や地方に任せず特別に学ぶ場を設け育成すべきだ。また同時にインターネット、デジタル化を進めて医療情報の拡大を図るべきである。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2022年07月号より転載〕